
地震とブロック塀|傾き・ひび・鉄筋の3点と撤去の補助金(2026年度)
結論: 見るのは3点だけです。傾き・ひび・鉄筋。道路に面していて高さ1m以上あり、押すと動く・縦にひびが通っているなら、撤去を考える時期です。撤去費用の目安は長さ1mあたり約5,000〜15,000円(2026年8月時点)。そして福岡市は1件30万円まで、北九州市は15万円までの撤去補助があります(いずれも2026年度=令和8年度。金額も要件も年度により変わります)。順番を間違えると補助が使えなくなるので、そこも含めて説明します。
ブロック塀のどこを見ればいい?(傾き・ひび・鉄筋の3点)
専門の道具は要りません。塀の正面と真横に立って、この3つを順に見てください。
| 見るところ | どう見るか | 気にしたほうがいいサイン | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1. 傾き | 塀の端に立ち、塀の面を横から目線でなぞる。柱や電柱と比べる | 道路側や隣地側に傾いている/上のほうだけ反っている | 塀ぎわに物を置かない。撤去・作り替えの相談へ |
| 2. ひび | 塀の両面と、地面との境目を見る | 縦に通ったひび/ひびから錆色の汚れが出ている/白い粉が吹いている | 錆色は内部の鉄筋が傷んでいるサイン。専門業者へ |
| 3. 鉄筋・基礎 | 塀の天端に笠木があるか。地面との境に基礎(コンクリート)が見えるか。塀を手で押してみる | 天端がむき出し/基礎が見えない/押すとぐらつく | 載せ替えではなく作り替え・撤去の検討へ |
あわせて「高さ」と「控え壁の有無」も見ておくと、後の判断が早くなります。控え壁というのは、塀に直角に付いている短い袖壁のことです。
鉄筋が入っているかは、外から分かる?
現場からひとこと(当社工務担当)
外観だけでは分かりません。私たちが現地で確かめているのは「鉄筋が入っているか」と「基礎があるか」の2つで、これは塀の段数・厚み・天端の状態・ひびから出ている錆の跡・叩いたときの音から判断します。判断がつかないときは、「鉄筋が入っていない可能性がある塀」として扱い、上に何かを載せる案は出しません。そして無筋の疑いがある塀には、部分的な補修や載せ替えではなく作り替え(または撤去)をおすすめしています。もうひとつ、意外と見落とされるのが天端(塀の一番上)です。笠木で覆われず、雨が上からしみ込む状態が続くと、内部の鉄筋が錆びていきます。錆びた鉄筋は膨らむので、そこからひび割れが広がります。つまりひびの原因が、上から入った雨であることがあるということです。だから当社は、塀を新しく造るときの仕様に笠木と天端の水勾配を必ず入れています。
高さの線は2つあります(1.2mと2.2m)
ブロック塀には、建築基準法施行令で決められた基準があります。数字が細かいので、覚えるのは1.2mと2.2mの2つの線だけで十分です。
- 2.2m: 鉄筋で補強したコンクリートブロック造の塀で、これが高さの上限です。これを超える塀は造れません。
- 1.2m: ここを超えると、長さ3.4m以下ごとに控え壁が必要になります。また、鉄筋を入れていない塀(石やレンガ、無筋のブロック)は、そもそも1.2mまでしか認められていません。
このほか、壁の厚さは10cm以上(高さ2mを超え2.2m以下なら15cm以上)、壁の中には径9mm以上の鉄筋を縦横80cm以下の間隔で入れる、基礎は丈35cm以上・根入れ30cm以上(高さ1.2m以下の塀を除く)といった基準があります。古い塀ほど、この基準ができる前に造られている可能性があります。
控え壁が無い塀は、それだけで基準を外れていることがあります
高さが1.2mを超えているのに、直角に付いた控え壁がどこにも見当たらない——これは、外から見て分かるいちばん明快なサインです。地上から数えられます(ブロック1段はおよそ20cmなので、7段で約1.4m)。
平成30年の大阪府北部を震源とする地震で塀の倒壊による被害が出たことをきっかけに、国が既設の塀の安全点検のチェックポイントを示し、各自治体が撤去の補助制度を整えました。いま多くの市に補助があるのは、この流れによるものです。
撤去にいくらかかる?補助金はいくら出る?(2026年度)
まず工事費の目安から。撤去費用は長さ1mあたり約5,000〜15,000円が一般的な相場です(2026年8月時点)。長さ10mの塀なら、おおよそ5〜15万円が一つの目安になります。同じ長さでこれだけ開くのは、基礎の深さ、重機が入れるか手壊しか、廃材の運び出し距離、隣地との近さで手間が大きく変わるためです。
そのうえで、2026年度(令和8年度)の福岡市・北九州市の制度を並べます。
| 福岡市 | 北九州市 | |
|---|---|---|
| 制度名 | ブロック塀等除却費補助事業 | ブロック塀等除却工事費補助制度 |
| 対象の塀 | 道路に面した塀で、①高さ2.2m超 ②高さ1.2m超で控え壁が有効に設けられていない ③高さ1m以上で著しいひび割れ・傾き等があり特に危険 のいずれか | 一団の土地と道路の間にあり、道路面から1m以上(擁壁の高さを含む)の高さがある塀 |
| 補助額の計算 | 撤去する長さ×15,000円 と 見積費用の3分の2 の低いほう | 見付面積1m²あたり10,000円×2分の1 と 除却工事に要する経費(消費税相当額を除く)の2分の1 の低いほう(1,000円未満切捨て) |
| 上限 | 1件あたり30万円 | 150,000円 |
| 2026年度の受付 | 令和8年4月13日より受付開始 | 令和8年4月13日から募集開始(予算上限に達した時点で終了) |
| 順番の決まり | 既に工事契約をした場合、工事を開始・完了した場合は対象外。着工の概ね1か月前までに申請 | 交付決定通知までは工事契約・除却工事を行えない |
| 工事を頼む会社 | 市の公式ページに事業者の所在地の条件の記載はありません | 市内事業者に限定(申請者の事情によりやむを得ない理由がある場合は市外事業者も認められます) |
| 工事のまとめ方 | — | 除却工事は単独で行うものとし、その他の建築工事等と一体的に行うものでないこと |
| その他の主な要件 | — | 一団の土地につき1回限り/国・地方公共団体等の他の補助金を受けていないこと/市税を滞納していないこと |
| 公式ページ | 福岡市の該当ページ | 北九州市の該当ページ |
計算してみるとこうなります(高さ1.2m・長さ10m・撤去工事費が税抜12万円だった場合の例)。
- 福岡市: 10m×15,000円=15万円 と 12万円×2/3=8万円 → 低いほうの8万円(上限30万円の範囲内)。
- 北九州市: 見付面積は1.2m×10m=12m²。12m²×10,000円×1/2=6万円 と 12万円(税抜)×1/2=6万円 → 6万円(上限15万円の範囲内)。
ここで見落としやすいのが消費税の扱いです。北九州市は「除却工事に要する経費(消費税相当額を除く)」と定めているため、税込の見積金額をそのまま2分の1にすると、実際より多く見積もることになります。見積書を見るときは、税抜の工事費がいくらかを先に確認してください。
制度の金額・要件・受付期間は年度により変わります。また予算に達すると年度の途中で受付が終わることがあります。お住まいの市町村が上の2市以外の場合も、同種の補助を用意していることが多いので、「(市町村名) ブロック塀 撤去 補助」で最新のページを確認してください。
申請の順番を間違えると、補助が受けられません
ここが一番よくある失敗です。正しい順番はこれだけです。
- 施工会社に現地を見てもらい、見積書を出してもらう
- 市に申請する(塀の写真・見積書などを添える)
- 市から交付決定の通知が届く
- ここで初めて工事契約・着工
- 完了後に実績報告を出し、補助金を受け取る
「危ないから急いで壊してしまおう」と先に工事を頼むと、要件を満たしていても対象外になります。急ぎたい気持ちは分かりますが、順番だけは守ってください。逆に、倒れそうで危険が差し迫っている場合は、まず市の担当課に相談すると、状況に応じた案内を受けられます。
塀の上に目隠しフェンスを載せてもいい?
現場からひとこと(当社工務担当)
背の高い目隠しフェンスの工事で、当社は既存のブロック塀の上に載せる案を出しません。工務の判断は「独立基礎になるのでブロック上は不可」です。目隠しフェンスは隙間が少ないぶん風をまともに受けます。その力は塀の頭の一点に集中しますが、既存の塀はフェンスを載せる前提の基礎・配筋になっていないことがほとんどです。地面で自立させる(独立基礎)ほうが、台風のたびに心配しなくて済みます。費用は載せるより上がりますが、やり直しになる確率を考えると結果的に安く収まることが多いです。
なお、塀の上にフェンスを載せる場合には、日本建築学会の規準で「塀の実高さ+フェンスの風圧による加算高さ=換算高さ」を1.6m以下に収める考え方があり、目隠しのように隙間の少ないフェンスほど加算が大きくなります。高さのある目隠しを希望される場合は、最初から独立基礎で考えるほうが現実的です。フェンスそのものの費用は目隠しフェンス工事の費用相場にまとめています。
直すより、作り替えたほうがいい場合
部分的な補修で持たせるか、作り替えるか。私たちが分けている線はこうです。
- 補修で様子を見られる: ひびが表面的で、傾きがなく、基礎がしっかりしていて、高さも基準の範囲内。天端に笠木を付けて雨の侵入を止めるだけで、進行を遅らせられることがあります。
- 作り替え・撤去を考える: 傾いている、押すと動く、縦にひびが通っている、ひびから錆色が出ている、控え壁が無いのに高い、鉄筋が入っているか分からない。この場合、上から化粧を直しても中の傷みは止まりません。
- 撤去だけにするか、作り替えるか: 目隠しが要らないなら撤去だけで済み、補助も使えます。目隠しが要るなら、撤去+独立基礎のフェンスという組み合わせが現実的です。ただし北九州市の補助は「除却工事は単独で行うもの」と定めており、フェンス設置と一体の工事にすると対象外になります。補助を使う場合は、撤去とフェンス設置の進め方を事前に市の担当課へ確認してください。
塀は敷地の境目に建っていることが多く、隣家との共有物になっている場合もあります。共有の塀を片側の判断だけで壊すことはできないので、着工前に境界と所有の確認をしておいてください。
よくある質問(FAQ)
- ブロック塀の撤去費用はいくらぐらいですか?
- 一般的な目安は長さ1mあたり約5,000〜15,000円です。長さ10mの塀であれば、おおよそ5〜15万円が一つの目安になります(2026年8月時点)。基礎の深さ、重機が入れるか手壊しか、廃材の運び出し距離、隣地との近さで金額は大きく変わるため、現地を見たうえでのお見積りで確定します。
- ブロック塀に鉄筋が入っているかは外から分かりますか?
- 外観だけでは分かりません。塀の頂部や端部の状態、天端に笠木があるか、ひび割れから見える錆の跡といった手がかりから推測はできますが、確実ではありません。壁を軽く叩いた音や、鉄筋探査、既存の図面で確認します。判断がつかない場合、私たちは「鉄筋が入っていない可能性がある塀」として扱い、上に何かを載せる案は出しません。
- ブロック塀の撤去に補助金は使えますか?
- 道路に面した危険なブロック塀については、多くの自治体が撤去費用の補助を用意しています。2026年度(令和8年度)の場合、福岡市は撤去する長さ1mあたり15,000円を乗じた額と工事費の3分の2の低いほうで1件30万円が上限、北九州市は見付面積1平方メートルあたり10,000円の2分の1と、除却工事に要する経費(消費税相当額を除く)の2分の1の低いほうで15万円が上限です。北九州市は工事を依頼する事業者が市内事業者に限定される点にも注意してください。金額も要件も年度により変わるため、必ず各市の最新のページで確認してください。
- 先に工事を頼んでから補助金を申請してもいいですか?
- できません。福岡市は既に工事契約をした場合や工事を開始・完了した場合は対象外と明記しており、北九州市も交付決定通知が届くまで工事契約・除却工事を行うことはできないとしています。順番は「見積り→申請→交付決定→契約・着工」です。この順番を間違えると、要件を満たしていても補助が受けられません。
- 古いブロック塀の上に目隠しフェンスを載せられますか?
- 背の高い目隠しフェンスについて、当社では塀の上に載せる案を出していません。フェンスが受けた風の力が塀の頭に集中し、もともとフェンスを載せる前提で造られていない塀では、そこが弱点になるためです。当社は独立基礎で地面に自立させる形を第一に提案しています。
参考にした公的情報
- 国土交通省「ブロック塀等の安全対策について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/blockbei.html
- 福岡市「ブロック塀等除却費補助事業」 https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/bid_safe/life/3609.html
- 北九州市「北九州市ブロック塀等除却工事費補助制度」 https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/28100017.html
※記事中の工事費は2026年8月時点の一般的な相場の目安で、幅で記載しています。実際の費用は現地の状況を確認したうえでのお見積りで確定します。補助制度の金額・要件・受付期間は年度により変わり、予算に達した時点で終了する場合があります。申請前に必ず各市の公式ページと担当課でご確認ください。